研究者が教える動物実験 全3巻

尾崎まみこ・村田芳博・藍 浩之・定本久世・吉村和也・神崎亮平・日本比較生理生化学会 編集

『研究者が教える動物実験』シリーズ刊行にあたって

 日本比較生理生化学会は、自然界に生息する多様な生物が環境下でいかに適応的に生活し、個体をそして種を維持するかを分子レベルから、細胞、組織、個体、さらに生態にいたる仕組みを様々なスケールから、その生理・生化学的な観点から明らかにすることで、サイエンス分野はもとより、社会や教育分野に貢献することを目指しています。なかでも生物多様性は、われわれ人類がかかえる環境問題をはじめ、生物共存やエネルギーなどの諸問題とも深くかかわり、次代を担う子供たちの科学教育のうえでも大切な課題となっています。

 2012年には「ゆとり教育」の脱却から、学習指導要領が改訂され、高等学校の理科の生物領域の内容が一変し、動物の感覚や神経、行動の仕組みについて学ぶ「環境応答」という項目が大幅に強化されました。また、単に教科書から知識を学ぶだけではなく、目的意識をもって観察や実験を行うことの大切さが示されています。自然や生物の仕組みを学ぶためには、単に知識を得るだけではなく、自身の観察や実験を通して、生物そのものから体験によって得られることがたくさんあります。様々な生物がもつ感覚能力、神経や脳による信号処理、筋肉を動かすことで行動する動物の仕組みを実際に調べることで、また比較を通して生物の多様性に気付き、ヒトと他の動物との違いや共通性を考えることで、生物がより身近な存在となってきます。観察や実験を通してはじめて生まれる問題意識、そしてそれを解決しようとすることで、教科書だけでは得られなかった能力が芽生え、生命をより深く理解し、生命の大切さがわかってくるものと思います。

 本学会では、『動物の多様な生き方』シリーズ(全5巻)や『研究者が教える動物飼育』シリーズ(全3巻)(共立出版)を学会の総力を挙げて出版し、動物の生き方の多様性や動物の扱い方、飼育・維持方法から入手や採集法にいたるまでをわかりやすく解説することで、社会や教育分野の課題や要請に応じてきました。

 今回、本学会の第3弾として、動物の個体レベルを基本に、よりミクロなスケール(遺伝子、細胞、組織、器官)から、またよりマクロなスケール(集団、生態系、環境)での観察や実験を通して、生命現象についてより深く理解するための『研究者が教える動物実験』シリーズ(全3巻)を出版することになりました。

 本シリーズを活用いただき、観察や実験を通して多様な生物の生命活動をより深く理解するとともに、教科書だけでは得られない生命の不思議、そして生命の大切さを感じ取っていただきたいと思います。

2015年5月
日本比較生理生化学会会長 神崎亮平

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